「何か新しいことを始めたい」
そう思ったことがある方は、きっと多いのではないでしょうか。新しい事業、新しい趣味、新しい習慣、新しいプロジェクト──。頭の中ではワクワクするアイデアが浮かんでいるのに、なぜか一歩を踏み出せない。あるいは、踏み出してはみたものの、すぐに心が折れてしまう。
実はその原因、「自分の意志が弱いから」ではないかもしれません。
足りなかったのは、たった1人の存在──「最初のフォロワー」だった、ということがあるのです。
今回は、何かを始めるときに「1人目のフォロワー」がいかに大切か、というお話をしたいと思います。
第1章 リーダーよりも大事な「最初のフォロワー」
「リーダーシップ」という言葉は、ビジネスの世界でも日常生活でも、よく耳にします。「あの人はリーダーシップがある」「リーダーになれ」──そんなふうに、新しいことを始める人、つまり「最初に動く人」に注目が集まりがちです。
しかし、ここで少し立ち止まって考えてみてください。
公園で1人で踊っている人がいたとします。周囲の人から見れば、「ちょっと変わった人だな」で終わりです。ところが、そこにもう1人、一緒に踊り始める人が現れたらどうでしょう。「あれ、何か楽しそうなことをやっているのかな?」と、見ている人の目が変わります。そして3人目、4人目と続き、気がつけばみんなで踊っている──。
これは、デレク・シヴァーズという起業家がTEDトークで紹介した有名なエピソードです。彼はこう言いました。「最初のフォロワーこそが、たった1人の変わり者をリーダーに変える」のだと。
つまり、新しいことを始める人がどれだけ優れたビジョンを持っていても、最初に「いいね、自分もやるよ」と言ってくれる人がいなければ、それはただの独り言で終わってしまうのです。
第2章 なぜ「1人目」がそんなに大事なのか
「別に、1人でもコツコツやればいいのでは?」
そう思われるかもしれません。もちろん、1人で黙々と続けられる強靭な精神をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。ただ、多くの人にとって、1人目のフォロワーが持つ力は想像以上に大きいのです。その理由を3つお伝えします。
1つ目は、「正しさの確認」ができることです。
新しいことを始めるとき、人は必ず不安になります。「こんなことやって意味があるのだろうか」「周りから笑われないだろうか」──そんな疑念が次々と浮かんできます。そこに、たった1人でも「それ、面白いね」「応援するよ」と言ってくれる人がいると、「ああ、自分のやっていることは間違っていないんだ」と思えます。この安心感は、何ものにも代えがたいものです。
2つ目は、「ムーブメントの起点」になることです。
先ほどの公園のダンスの話を思い出してください。1人が踊っているだけでは「個人の趣味」ですが、2人になった瞬間に「何かが起きている」に変わります。3人目以降は、実は1人目のフォロワーを見て参加を決めていることが多いのです。つまり、最初のフォロワーが「参加してもいいんだよ」という空気をつくってくれるわけです。
3つ目は、「継続の燃料」になることです。
新しいことを始めて、最初の数日はテンションが高いので続けられます。問題はその後です。だいたい2週間くらい経つと、「あれ、なんでこんなこと始めたんだっけ……」という時期がやってきます(経験ある方、多いのではないでしょうか)。このとき、自分の取り組みを見てくれている人、期待してくれている人が1人でもいると、「まあ、もう少しだけ頑張ってみるか」と踏ん張れるのです。
第3章 具体例──小さな町のパン屋さんの話
少しわかりやすい例を挙げてみます。
ある小さな町で、パン屋さんを開こうとした方がいたとします。その方は、天然酵母を使ったこだわりのパンをつくるのが得意でした。しかし、町にはすでに大手チェーンのパン屋があり、価格では到底かないません。「本当にお客さんが来てくれるだろうか」と不安でいっぱいです。
オープン初日、お店の前を通りかかった近所の方が、ふらりと入ってきてくれました。試しに食パンを1斤買ってくれて、翌日またやって来て「昨日の食パン、すごくおいしかったよ」と声をかけてくれたのです。
たった1人のお客さんです。売上としては微々たるものでしょう。
でも、その一言がきっかけで、パン屋さんの方はこう思いました。「この味を気に入ってくれる人がいるんだ」と。
その後、その近所の方が友人に「あそこのパン屋さん、おいしいよ」と伝え、友人がまた別の友人に伝え──気がつけば、小さなパン屋さんは週末には行列ができるお店になっていました。
最初に「おいしかったよ」と言ってくれた1人がいなければ、もしかしたらそのパン屋さんは数ヶ月で閉店していたかもしれません。
この話のポイントは、最初のフォロワーは必ずしも大きな投資や大げさな応援をする必要はない、ということです。「いいね」と言ってくれるだけでいい。「また来るよ」と言ってくれるだけでいい。その小さな一歩が、始めた人の背中を押し、次のフォロワーを呼び込む流れをつくるのです。
第4章 あなたは「始める側」にも「フォロワー側」にもなれる
ここまで読んで、「じゃあ、自分が何かを始めるときは最初のフォロワーを見つければいいんだな」と思われたかもしれません。その通りです。でも、もうひとつ大事な視点があります。
それは、あなた自身が誰かの「最初のフォロワー」になれる、ということです。
周りを見渡してみてください。何か新しいことを始めようとしている人はいませんか? 新しい企画を提案している同僚、初めてのイベントを開こうとしている友人、ブログを書き始めた知り合い──。
そういう人に、「いいね、応援してるよ」と声をかけるだけでいいのです。大げさな言葉はいりません。「見てるよ」「面白そうだね」──それだけで十分です。
実は、最初のフォロワーになることは、リーダーになることと同じくらい勇気がいる行動です。なぜなら、まだ誰もやっていないことに「自分も賛同する」と表明するわけですから。2人目、3人目になるほうが、ずっと気楽です。だからこそ、最初のフォロワーには特別な価値があるのです。
もし「自分はリーダータイプじゃないから……」と思っている方がいたら、ぜひ「最初のフォロワー」という役割に目を向けてみてください。あなたの「いいね」が、誰かの挑戦を本物のムーブメントに変えるかもしれません。
第5章 最初のフォロワーを見つけるためのヒント
では、自分が何かを始める側だった場合、最初のフォロワーはどうやって見つければよいのでしょうか。
まず大前提として、最初のフォロワーは「探す」ものではなく、「出会う」ものです。無理やり誰かを引き込もうとすると、だいたいうまくいきません。居酒屋で「いい話があるんだけど」と切り出すマルチ商法の勧誘みたいになってしまいますので、ご注意ください。
大切なのは、自分がやっていることを「見える状態」にすることです。
たとえば、SNSで発信する、身近な人に話してみる、小さくてもいいから成果物を見せる。「自分はこういうことをやっています」と、さりげなく周囲に伝えるだけで十分です。
そうすると、不思議なことに、共感してくれる人がふらりと現れます。その人こそが、あなたにとっての「1人目のフォロワー」です。
もうひとつ大事なのは、最初のフォロワーが現れたら、その人を大切にすることです。感謝を伝え、一緒に楽しむ。最初のフォロワーがいい体験をすれば、その人は自然と「これ、いいよ」と周りに伝えてくれます。つまり、最初のフォロワーを大事にすることが、2人目、3人目のフォロワーを呼び込む最良の方法なのです。
おわりに たった1人から、すべてが始まる
新しいことを始めるのは、怖いことです。うまくいくかどうかわからない。周りに理解されないかもしれない。孤独を感じることもあるでしょう。
でも、たった1人、「それ、いいね」と言ってくれる人がいるだけで、世界は驚くほど変わります。
もしあなたが今、何か新しいことを始めようとしているなら、まずは誰か1人に話してみてください。完璧なプレゼンテーションなんて必要ありません。「こんなこと考えてるんだけど」──それだけでいいのです。
そして、もしあなたの周りに新しい挑戦をしている人がいたら、ぜひ声をかけてあげてください。あなたの何気ない一言が、その人にとっての「運命の1人目」になるかもしれないのですから。
新しいことは、いつだってたった1人から始まります。
でも、それが広がるのは、2人目から──つまり、最初のフォロワーからなのです。

ミタスサポート事務所代表。富山県で中小企業向けに経営とIT支援を行っています。
中小企業診断士/ITストラテジスト/情報処理安全確保支援士。
確かな知識と実務経験を元に、役立つ情報を随時発信中。
小さな事業者向けに小回りの利くITサービスやサイバーセキュリティ対策に力を注いでいます。
