その会議、なぜか毎回ピッタリ1時間で終わりませんか?〜パーキンソンの法則と「短く設定する」という発想〜

突然ですが、皆さんの会社の会議は、なぜか毎回「ちょうど良い時間」で終わっていませんか?

1時間の会議は、ちょうど1時間で終わる。30分の会議は、なぜか30分ぴったりで終わる。2時間の会議は、不思議なことに2時間きっかり使い切る。

「いやいや、ちょうど良い時間を設定しているからでしょう」と思われるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。試しに、いつも1時間で行っている定例会議を30分に設定してみてください。驚くべきことに、その会議もまた、ちょうど30分で終わるはずです。

これは魔法でも偶然でもありません。「パーキンソンの法則」と呼ばれる、組織で広く観察される現象です。

パーキンソンの法則とは何か

パーキンソンの法則とは、1958年にイギリスの歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した経験則です。彼はこれを次のように表現しました。

「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」

要するに、人は与えられた時間をすべて使い切ってしまう、という法則です。

例えば、夏休みの宿題を思い出してみてください。40日間という長い期間があるにもかかわらず、なぜか最終日に追い込まれて泣きながら片付けた経験はないでしょうか。あれもまさにパーキンソンの法則の典型例です。時間が40日あれば、宿題は40日分の苦しみに膨張するのです。

そして恐ろしいことに、この法則は大人になって会社員になっても、経営者になっても、私たちにつきまといます。

業務時間に当てはめてみる

この法則を業務に当てはめると、いくつもの「あるある」が見えてきます。

たとえば、ある営業資料の作成を考えてみましょう。締切まで1週間あると伝えると、その人はなんとなく1週間かけて作成します。途中で何度も悩み、構成を練り直し、フォントを変えてみたりして、結局1週間使い切ります。

ところが、同じ資料を「明日の午前中までにお願いします」と頼んだらどうでしょう。文句を言われるかもしれませんが、おそらく明日の午前中までには出てきます。しかも、内容のクオリティは1週間かけたものと、それほど変わらなかったりするのです。

これは決して、その人が怠けているわけではありません。人間の脳は、与えられた時間に応じて作業の細かさや慎重さを自動調整してしまう性質を持っているのです。時間があれば、その分だけ細かいところまで気になる。時間がなければ、本質的なところだけに集中する。それだけの話です。

ちなみに、私自身もこの記事を「3日以内に書く」と決めていたら、おそらく3日かけてダラダラと書いていたと思います。だからこそ、今書いています。

具体例:定例会議に切り込んでみる

それでは、具体的な改善例として、多くの会社で行われている「週次の定例会議」を取り上げてみましょう。

ある会社では、毎週月曜日の朝に、部署全員が集まって1時間の定例会議を行っていました。内容は、各メンバーの先週の振り返りと今週の予定の共有が中心です。誰も「これは無駄だ」とは言いません。なんとなく、必要なものとして続いていました。

しかし、よく観察してみると、こんな光景が広がっていました。

まず最初の10分は、参加者が揃うのを待ちながらの雑談。次の40分で各メンバーが順番に報告するのですが、誰かが話し始めると「あ、それで思い出したんだけど」と脱線が始まる。最後の10分で、なぜか急に話がまとまり、「では今週もよろしくお願いします」で終了。

そこで、思い切ってこの会議の時間を30分に変更してみました。すると、どうなったか。

雑談の時間は3分に短縮されました。各メンバーの報告は要点だけになり、脱線も激減。それでも、必要な情報共有はきちんとできていたのです。

さらに思い切って15分にしてみたところ、立ったまま行う「スタンディングミーティング」のような形になり、結論から話す習慣が自然と身につきました。報告内容も「先週やったこと・今週やること・困っていること」の3点に絞られ、むしろ会議の質は上がったとさえ感じられたのです。

つまり、削減された45分は、まるごと無駄だったとも言えます。少し悲しい現実ですが、これが多くの会議の実態です。

部下への作業指示にも応用できる

このパーキンソンの法則は、会議だけでなく、部下への作業指示にも非常によく当てはまります。

たとえば、部下に資料作成を頼むとき、つい優しさから「来週いっぱいでいいよ」と長めの締切を伝えていませんか。もちろん、相手を急かさない配慮として、それ自体は悪いことではありません。しかし、その「優しさ」が、結果的に部下のためにも会社のためにもなっていない可能性があるのです。

「来週いっぱいで」と伝えると、その作業は本当に来週いっぱいかかります。途中で他の仕事が入ってきたり、「もう少し情報を集めてから」と着手が後ろ倒しになったり。気がつけば、最終日の夜に慌てて仕上げている、というのはよくある光景です。

ところが、同じ作業を「水曜日の15時までにたたき台をください」と伝えるとどうなるか。多くの場合、水曜日の15時には何らかの形でアウトプットが出てきます。完成度100%ではないかもしれませんが、たたき台としては十分なものが、です。

ここで大切なのは、最初から完璧を求めないことです。「たたき台を早めに出してもらい、そこから一緒にブラッシュアップする」というスタイルに切り替えると、部下の仕事は格段に速くなり、しかも上司の意図とズレた方向に走ってしまう事故も防げます。締切ギリギリに「初めて見せられた成果物が、想定と全然違う」という悲劇は、長い締切が生む典型的な副作用なのです。

ちなみに、締切を短く設定する際にはちょっとしたコツがあります。「金曜日まで」よりも「金曜日の17時まで」、さらには「金曜日の15時まで」と、具体的に時刻まで指定することです。「金曜日まで」だと、人間は無意識に金曜日の終業間際を想定してしまいますが、15時と切られると、その日の朝から逆算して動き始めます。

ただし、注意点もあります。何でもかんでも短い締切で詰めてしまうと、部下は疲弊しますし、品質も落ちます。「短くする」のはあくまで、本来もっと早く終わるはずの仕事が、無意識に膨張しているケースに対してです。難易度の高い仕事や、じっくり考える必要のある仕事まで短く切ってしまうと、ただのブラック上司になってしまいます。その線引きは、上司側の腕の見せどころでもあります。

なぜ「短く設定する」が効くのか

ここまで読んでいただいて、「では時間を短くすればすべて解決か」と思われたかもしれません。半分正解で、半分は注意が必要です。

時間を短く設定することが効く理由は、主に3つあります。

1つ目は、集中力が高まること。締切が近いと、人は無駄話や細部のこだわりを減らし、本題に集中します。

2つ目は、論点が絞られること。時間がないとわかれば、「これは今やるべきか」と無意識に取捨選択が始まります。

3つ目は、決断が早くなること。時間があると「もう少し考えましょう」となりがちですが、時間がないと「とりあえずこれで進めましょう」という判断が下されやすくなります。

一方で、先ほどもお伝えしたとおり、短くしすぎて議論や検討が深まらず、後から問題が噴出するようでは本末転倒です。「短くすればよい」のではなく、「目的に対して適切に短くする」ことが大切です。

今日からできる、小さな一歩

最後に、明日から試せる具体的なアクションを3つご紹介します。

1つ目は、いつもの会議の時間を、まず25%短くしてみることです。1時間なら45分、30分なら22分(キリが悪い時間にすると、かえって時間を意識する効果があります)。

2つ目は、部下への作業指示の締切を、日付だけでなく時刻まで指定してみることです。「金曜まで」を「金曜の15時まで」に変えるだけで、仕事の進み方が変わります。

3つ目は、自分自身の作業にも締切を厳しく設定してみることです。「この資料は60分で仕上げる」と決めて、タイマーをセットしてみてください。最初は焦りますが、慣れてくると、不思議なほど時間内に終わるようになります。

おわりに

パーキンソンの法則は、私たちに少し意地悪な真実を突きつけてきます。「あなたが忙しいのは、忙しいだけの時間を自分に与えているからかもしれませんよ」と。

しかしこれは、裏を返せば、時間の設定を変えるだけで、業務効率は大きく変わる可能性があるということでもあります。会議の時間、部下への締切、自分自身の作業期限。一度、見直してみてはいかがでしょうか。

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