改めて考えるデジタル化とは ~そぎ落とすことから始まる、本当の準備~

「デジタル化を進めましょう」「DXが必要です」といった言葉を、ここ数年で何度も耳にするようになりました。
一方で、「結局、何をすればいいのか分からない」「デジタル化したのに楽にならない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

デジタル化という言葉は、とても便利です。便利すぎて、人によってイメージしている内容が違ってしまうほどです。
そこで今回は、デジタル化とは何なのかを、少し立ち止まって考えてみたいと思います。

デジタル化は「増やすこと」ではなく「減らすこと」

デジタル化というと、新しいシステムを入れたり、作業をパソコンに置き換えたりすることを思い浮かべがちです。
しかし、本質はそこではありません。

デジタル化とは、余計な情報をそぎ落とし、扱いやすい形に整理することだと考えています。
情報を増やすのではなく、減らす。
この視点が抜けてしまうと、デジタル化は途端に苦しいものになります。

手書きからパソコンに変えると、失われるもの

たとえば、手書きのレポートをパソコンで作成するように変えた場合を考えてみます。
このとき、実は多くの情報が失われています。

文字の筆圧、ペンの色、字のクセ、紙の質感。
もしハンコを押していれば、そのハンコもなくなります。
代わりに、ログインIDやパスワードによる認証といった形に変わるでしょう。

一見すると、「大事なものを失っている」ようにも感じますが、業務を進めるうえで、筆圧や色、筆跡が重要な場面はそれほど多くありません
多くの場合、「何が書いてあるか」「誰が作成したか」が分かれば十分です。

ハンコの役割を考えてみる

ハンコについても同じことが言えます。
ハンコが押されていること自体に価値があるのではなく、
・誰が
・いつ
・どの内容を
承認したのかが分かることが重要です。

それがきちんと認証できているのであれば、手段はハンコでなくても問題ないケースは多いでしょう。
デジタル化とは、こうした目的と手段を切り分けて考えることでもあります。

そぎ落としてよい情報、残すべき情報

デジタル化を進めるうえで重要なのは、
「どの情報は付加価値が低く、そぎ落としてよいのか」
「どの情報は管理すべきなのか」
を見極めることです。

付加価値の低い情報は、デジタル化によって積極的に削っていく。
一方で、管理すべき情報は、しっかりとデジタルで残します。

残した情報は「使える状態」にする

残した情報は、ただ保存するだけでは意味がありません。
少なくとも、次の状態にしていく必要があります。

・検索できる
・集計できる
・数値として把握できる

この状態にすることで、情報は初めて業務に役立つものになります。
これらを実現する取り組みが、一般に言われるシステム化見える化です。
「忙しかった気がする」「最近増えている感じがする」といった感覚の話から、
「どの業務にどれくらい時間がかかっているのか」
「どの時期に、何が増えているのか」
といった、具体的な話ができるようになります。

感覚や経験が不要になるわけではありません。
むしろ、数字が見えるようになることで、経験がより活きるようになります。

その先にあるDX

そして、この「数字をもとに改善や判断を回し続けられる状態」が、その先にあるDXにつながっていくのだと思います。
DXとは、派手なツールを導入することでも、無理に業務を変えることでもありません。

デジタル化によって整えられた情報を使い、
仕事の進め方や価値の出し方を、少しずつ変えていくこと。
それがDXの正体ではないでしょうか。

付加価値の高い業務は、アナログでもよい

ここで強調したいのは、すべてをデジタルにする必要はないということです。
むしろ、付加価値の高い業務は、人が深く関わるアナログな形のほうが向いていることも多くあります。

考える、悩む、話を聞く、判断する。
こうしたことは、人が思いきり関わるからこそ意味があります。
デジタル化は、人の代わりになるものではありません。

おわりに

デジタル化とは、便利な道具を増やすことではありません。
余計な情報をそぎ落とし、管理すべき情報を数値として扱えるようにし、人が付加価値の高い仕事に集中するための下準備です。

「この情報は本当に必要だろうか?」
その問いを一つずつ積み重ねていくことが、現実的で無理のないデジタル化につながっていくのだと思います。

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