「この会議、自分いなくても回るよな……」
会議中、そんなことを思った経験はないでしょうか。議題に関係のない報告をぼんやり聞きながら、頭の中では夕飯のメニューを考えている。隣の人はノートパソコンで別の作業をしている。向かいの人はうつむいてスマホをいじっている。そして会議が終わった後、「で、結局何が決まったんだっけ?」と誰かがつぶやく。
こんな光景、日本中のオフィスで毎日繰り広げられているのではないかと思います。
今回は「会議の参加者は少なければ少ないほどよい」というテーマでお話しします。「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。でも、当たり前のことほど実行されていないのが、ビジネスの世界の不思議なところです。
第1章:なぜ会議の人数は膨らむのか
まず考えたいのは、「なぜ会議の参加者はどんどん増えていくのか」ということです。
理由はいくつかあります。
一つ目は、「念のため呼んでおこう」症候群です。「この件、あの部署にも関係あるかもしれないから、一応声をかけておこう」。この”一応”と”念のため”が積み重なると、気づけば会議室がぎゅうぎゅう詰めです。誰かが「椅子が足りない」と言い出して、隣の会議室から椅子を借りてくる。そこまでして全員集める必要があったのかと考えると、たいていの場合、答えは「なかった」です。
二つ目は、「呼ばないと角が立つ」問題です。特に日本の組織では、情報共有の場に呼ばれないことが「のけ者にされた」と受け取られることがあります。会議の目的は意思決定のはずなのに、いつの間にか「仲間外れにしない」ことが目的にすり替わっている。これは本末転倒です。
三つ目は、「偉い人がいると安心する」心理です。決裁者でもないのに、なんとなく役職が上の人がいると場が締まるような気がする。でも実際には、その「偉い人」の一言で議論の方向がガラッと変わってしまい、現場の意見が言えなくなる――なんてことも珍しくありません。
第2章:参加者が多い会議で何が起きるか
参加者が多い会議には、いくつかの「あるある」な問題が発生します。
発言しない人が増える
人数が増えれば増えるほど、一人あたりの発言時間は当然減ります。10人で1時間の会議なら、単純計算で一人6分。でも実際には、よく話す2〜3人が大半の時間を使い、残りの7〜8人は聞いているだけです。聞いているだけならまだいいのですが、先ほど書いたように、夕飯のメニューを考えたり、スマホをいじったりしている人も出てきます。
これは人間として自然な反応です。心理学では「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」と呼ばれる現象があります。綱引きの実験で、人数が増えるほど一人あたりが出す力が減るという有名な研究です。会議でも同じことが起きます。「自分が発言しなくても誰かが言ってくれるだろう」と思うと、当事者意識が薄れていくのです。
意思決定が遅くなる
参加者が多いと、「全員の合意を取らなければ」という空気が生まれやすくなります。一人ひとりに意見を聞いて回り、少しでも異論が出ると「持ち帰って検討しましょう」になる。結果、次の会議でまた同じ議題が登場する。これを繰り返しているうちに、ビジネスチャンスはどこかへ行ってしまいます。
コストが見えにくい
会議のコストを計算したことはありますか? たとえば、年収600万円の社員の時間単価はざっくり3,000円程度です。この社員が10人集まって1時間会議をすれば、それだけで3万円。週に1回なら年間で約150万円です。パート社員1人を雇えるくらいの金額が、「なんとなく集まる会議」に消えている計算になります。
もちろん、必要な会議にはコストをかける価値があります。問題は、「本当に必要だったのか検証されていない会議」が多すぎることです。
第3章:「少人数会議」で変わった会社の話
ある製造業の中小企業の話です。
この会社では、毎週月曜日の朝に全部門の管理職が集まる「経営会議」を開いていました。参加者は15人。議題は各部門の週次報告と、全社的な課題の共有です。
ところが、この会議がいつも2時間以上かかるのに、実質的な議論が行われるのは最後の15分程度。残りの時間は、各部門が順番に報告を読み上げるだけでした。しかも、報告内容のほとんどは自分の部門に関係がない。製造部長が営業の数字を聞いても、その場でできることは特にありません。みんな薄々気づいてはいたものの、「ずっとこうやってきたから」という理由で誰も変えようとしなかったのです。
そこで、この会社では思い切って会議の形を変えました。
まず、週次報告は事前に共有フォルダにアップロードするルールにしました。読めばわかることを、わざわざ口頭で読み上げる必要はありません。そのうえで、経営会議の参加者を社長・副社長・経営企画の3人に絞り、「意思決定が必要な議題」だけを扱うようにしました。各部門から議題を事前に提出してもらい、関係する部門長だけがその議題のときに呼ばれる形式です。
結果はどうなったか。会議時間は2時間から40分に短縮されました。そして何より大きかったのは、「その場で決まる」ようになったことです。3人なら合意形成に時間はかかりません。必要な情報が足りなければ、担当者にその場で電話して確認する。以前は「次回持ち越し」になっていた案件が、ほとんどその日のうちに結論が出るようになりました。
浮いた時間で管理職が現場に出る時間が増え、現場の問題がより早く把握できるようになった――というおまけつきです。
第4章:「じゃあ何人がベストなの?」という話
「少ないほどよい」とは言いましたが、さすがに1人では会議になりません(それはただの独り言です)。
では、何人くらいが適切なのでしょうか。
よく言われるのが、Amazonのジェフ・ベゾス氏が提唱した「ピザ2枚ルール」です。会議の参加者は、ピザ2枚で足りる人数にせよ、というものです。だいたい6〜8人くらいでしょうか。日本のピザは少し小さいので5〜6人かもしれませんが、まあそのあたりです。
ただ、私の感覚では、「意思決定の会議」であれば3〜5人がベストだと思っています。議論に全員が参加できて、合意形成もスムーズにできる人数です。情報共有が目的であれば、そもそも会議ではなくメールやチャットで十分なことがほとんどです。
大切なのは、参加者を決めるときに「この人がいないと決められないか?」と自問することです。「いたほうがいい」ではなく、「いないと困る」人だけを呼ぶ。この基準を徹底するだけで、会議の人数はかなり絞れるはずです。
第5章:参加者を減らすための3つのコツ
とはいえ、「明日から会議の人数を半分にします」と宣言するのは現実的ではありません。角が立たないように、でも確実に人数を減らしていくためのコツをお伝えします。
1つ目:議題ごとに参加者を変える
会議の最初から最後まで全員がいる必要はありません。議題Aに関係する人は最初の15分だけ参加し、終わったら退出する。議題Bの関係者はそこから入る。この方式にすれば、「会議に呼ばれていない」という不満も起きにくくなります。自分に関係のある議題には参加できるのですから。
2つ目:「情報共有」と「意思決定」を分ける
情報共有のためだけに人を集めるのは、令和の時代にはもったいないです。報告事項はメール・チャット・共有ドキュメントで済ませましょう。それでも「読んでくれない人がいる」という問題があるかもしれませんが、それは会議の問題ではなく、情報共有の仕組みの問題です。会議で解決しようとすると、かえって事態は悪化します。
3つ目:「議事録係」を決めて共有する
参加しなかった人には議事録で内容を共有すればよいのです。「自分がいなくても、何が決まったかわかる」という安心感があれば、会議に出なくても不安は感じません。逆に言えば、議事録が残らない会議は、参加していた人すら内容を忘れてしまうので、人数以前の問題です。
おわりに:会議は「集まること」が目的ではない
会議の本来の目的は、「人が集まること」ではなく、「何かを決めること」です。
にもかかわらず、多くの組織で「集まること自体」が目的化してしまっています。毎週決まった時間に、決まったメンバーが、決まった会議室に集まる。そこに疑問を持つ人は少ない。なぜなら、「ずっとそうしてきたから」。
でも、「ずっとそうしてきたから」は、「これからもそうすべき理由」にはなりません。
ぜひ一度、自社の会議を振り返ってみてください。参加者全員が本当に必要かどうか。報告を聞いているだけの人はいないか。会議の後に「今日の会議、意味あったかな」と思ったことはないか。
もし心当たりがあるなら、まずは次の会議から一人だけ参加者を減らしてみてください。たった一人でも、会議の空気は変わります。そして減らされた側も、意外と「呼ばれなくてラッキー」と思っているかもしれません。
会議は少数精鋭で、短く、濃く。それだけで、組織のスピードはぐっと上がるはずです。

ミタスサポート事務所代表。富山県で中小企業向けに経営とIT支援を行っています。
中小企業診断士/ITストラテジスト/情報処理安全確保支援士。
確かな知識と実務経験を元に、役立つ情報を随時発信中。
小さな事業者向けに小回りの利くITサービスやサイバーセキュリティ対策に力を注いでいます。
