「仕組化が大切だ」という言葉は、今や多くの職場で聞かれるようになりました。ただ、その重要性は理解していても、実際に行動に移せている会社はそれほど多くありません。その理由の一つは、仕組化がどうしても後回しにされやすいからです。日々の業務に追われ、「今は忙しいから」「落ち着いたらやろう」となりがちです。
そんな仕組化を一気に前に進めるきっかけとして、人事異動は非常に有効です。
仕組化とは何か
仕組化とは、仕事のやり方や判断基準を明確にし、誰が担当しても一定の成果が出る状態をつくることです。逆に、「この仕事は〇〇さんしかわからない」「長年の勘でやっている」という状態は、仕組化とは正反対です。
属人化が進むと、その人が休んだだけで業務が止まります。本人も「休みにくい」「気が抜けない」と感じ、周囲も常に頼りきりになります。仕組化は、会社のためだけでなく、働く人の負担を減らす意味でも重要です。
なぜ人事異動が有効なのか
人事異動があると、仕事の前提が一気に崩れます。新しい担当者は「なぜこの作業が必要なのか」「どこまでやれば正解なのか」を知りません。その結果、質問が増えます。
この質問こそが、仕組化の入り口です。「前からそうしている」「なんとなくそうなっている」という説明が通用しなくなり、仕事を言語化せざるを得なくなります。つまり、人事異動は仕組化を「やらざるを得ない状況」を作ってくれるのです。
具体例:引き継ぎで見える問題
例えば、営業事務の担当者が異動するとします。引き継ぎでは、「この書類は朝一で処理」「このお客さんは少し注意」といった説明が出てきます。しかし理由までは書かれていないことが多いです。
新任者は「なぜ注意が必要なのか」「判断基準は何か」がわかりません。この状態では、同じミスが繰り返されます。そこで、判断の背景や例外パターンを整理することで、初めて仕事が仕組として残ります。
人事異動は仕事を見直す強制力
通常業務の中で、「仕事のやり方を整理しましょう」と言っても、なかなか進みません。ですが、人事異動には期限があります。「この日までに引き継ぐ」という明確なゴールがあるため、嫌でも手を動かすことになります。
この強制力があるからこそ、曖昧だった作業や無駄な手順が表に出ます。「これ、実はやらなくても困らないですね」と気づくことも少なくありません。
仕組化が進むと起きる変化
仕組化が進むと、仕事の再現性が高まります。引き継ぎにかかる時間が減り、新任者も早く戦力になります。また、「誰かがいないと困る」という状態が減るため、職場全体の安心感が高まります。
結果として、異動や配置換えもしやすくなり、会社としての柔軟性も上がります。
おわりに
引き継ぎ資料が分厚いのに、最後に「詳細は口頭で説明します」と書かれていることがあります。もはや資料なのかメモなのかわかりません。ですが、こうした状態は珍しくありません。人事異動は、その「口頭説明頼み」を卒業するチャンスでもあります。
仕組化は特別なことではありません。人が変わる前提で仕事を整理するだけです。人事異動は、その前提を強制的に作ってくれます。
もし仕組化に行き詰まりを感じているなら、人事異動を「大変なイベント」ではなく、「仕組を作る絶好の機会」と捉えてみてください。その視点だけでも、会社の見え方は大きく変わるはずです。

ミタスサポート事務所代表。富山県でIT支援を営んでいます。
中小企業診断士/ITストラテジスト/情報処理安全確保支援士。
確かな知識と実務経験を元に、役立つ情報を随時発信中。
小さな事業者向けに小回りの利くITサービスやサイバーセキュリティ対策に力を注いでいます。

