生成AIが当たり前の今、5年前と同じやり方をしている場合は注意が必要です

2022年の年末にChatGPTが公開されてから、すでに3年以上が経過しました。登場した当初は、「少し変わった便利ツール」くらいの見方もありましたが、今ではそうではありません。生成AIは一部の詳しい人だけが使うものではなく、仕事の進め方そのものを見直す前提として考えるべき存在になっています。

特に、パソコンで行っている業務は、ほぼすべてにおいて効率化の余地があると言ってよいでしょう。文章作成、要約、議事録、メールの下書き、資料の構成案、情報整理、検索、翻訳、表現の言い換えなど、これまで人が時間をかけていた作業の多くは、すでに「人がゼロから全部やる必要はない」時代に入っています。

それでもなお、5年前とまったく同じ感覚、同じ手順、同じ会議、同じ資料づくりを続けている場合は注意が必要です。それは単なる“昔ながらのやり方”ではなく、変化への対応が遅れている状態かもしれないからです。

5年前と同じやり方が危ない理由

以前は、人が最初から最後まで手を動かすことが当たり前でした。文書も企画も集計も、まず人が考えて、書いて、整えて、ようやく形になる。だから時間がかかるのは当然でした。

しかし今は、最初の土台づくりをAIに任せることができます。ゼロから作るのではなく、まずたたき台を出してもらい、人が確認し、直し、判断する。この流れに変えるだけで、仕事のスピードは大きく変わります。

ここで大事なのは、「人が不要になる」という話ではないことです。むしろ逆で、人が本当にやるべきことがはっきりしてきた、ということです。事実確認、最終判断、相手に合わせた伝え方、責任のある決定。こうした部分は今でも人の役割です。ただ、それ以外の“毎回ゼロから頑張る作業”まで抱え込み続ける必要は薄くなっています。

昔は根性も立派な武器でしたが、今は根性だけで自転車に勝とうとしているような場面もあります。気合いは大切です。ただ、坂道を全力疾走する前に、ギアがあるなら使ったほうがよいです。

パソコン業務は、ほぼ見直し対象です

日々の仕事を見渡すと、パソコンの前で行う業務は驚くほど多いものです。メールを書く、会議資料をつくる、報告書をまとめる、議事録を整理する、社内向けのお知らせを出す、提案書の見出しを考える、アンケート結果を要約する、マニュアル文を整える。こうした作業は、程度の差はあっても、ほぼすべて効率化の対象です。

もちろん、AIが出した内容をそのまま使うのは危険なこともあります。誤りもありますし、現場に合わない表現になることもあります。ですが、それは「使えない」という意味ではありません。下書きや整理役として使うだけでも十分に価値があります。

たとえば、これまで30分かけていた文面作成が15分になるだけでも、週に何本もあれば大きな差になります。しかも、その差は一度きりではありません。毎週、毎月、同じ種類の業務が発生するなら、効率の差は積み上がっていきます。気づいたら、隣では同じ人数なのに打ち返している仕事量が増えている、ということも起こります。

現場の仕事も「付随するデータ」が変わっています

生成AIやデジタル化の話になると、「うちは製造業だから関係ない」「運送やサービス業は現場が中心だから別の話」と考える方もいます。ですが、実際にはそう単純ではありません。

たしかに、製造、運送、サービスなどの労働そのものは、いきなり全部が自動化されるわけではありません。現場で人が動く仕事は、今もこれからも重要です。ただし、現場に付随する情報やデータは、以前よりはるかに取得・管理しやすくなっています。

たとえば、製造であれば作業時間、不良率、設備停止の傾向、点検履歴。運送であれば到着時間、走行ルート、積載状況、遅延要因。サービス業であれば来店時間帯、対応件数、待ち時間、クレームの傾向、予約の偏り。こうしたものは、現場の仕事そのものではなくても、現場の改善に直結する重要な情報です。

つまり、労働の中心が人であることと、管理や改善が昔のままでよいことは別の話なのです。現場は人、改善は勘、報告は紙、集計はあとでExcel、会議でなんとなく共有――この流れがずっと続いているなら、そこには見直しの余地があります。

会議のやり方も、昔のままでよいとは言えません

会議も同じです。いまは対面だけでなく、リモート会議も普通に使える時代です。遠方の相手と話すために、必ず全員が移動しなければならないわけではありません。録画、議事録の自動整理、画面共有、資料の同時確認など、以前にはなかった前提が増えています。

それなのに、集まること自体が目的になっている会議、事前に読めば済む内容を延々と読み上げる会議、結論が決まらない会議が続いているとしたら、それは単に効率が悪いだけではありません。「変えられない組織」という印象にもつながります。

会議室に全員集まって、紙の資料をめくりながら、最後に「では次回までに考えておいてください」となる会議も、味わいはあります。ですが、味わいだけで経営は進みません。昭和の喫茶店のナポリタンは魅力がありますが、会議運営まで鉄板でジュージューさせる必要はないはずです。

変革できないことは、価格と採用にも響きます

ここは見落とされやすい点ですが、やり方を変えられないことは、内部の問題だけで終わりません。商品やサービスの価格にも、採用にも影響してきます。

まず価格面です。業務の進め方が非効率なままだと、同じ成果を出すために余分な時間と手間がかかります。そのコストは、どこかで回収しなければなりません。すると、商品価格やサービス価格が相対的に弱くなります。

もちろん、値段を上げること自体が悪いわけではありません。価値に見合っていれば問題ありません。ただし、裏側の非効率まで価格に乗ってしまうと、競争力は落ちやすくなります。相手が同じ品質で、より早く、よりスムーズに提供できるなら、比較されたときに不利になります。

次に採用面です。いま仕事を選ぶ人たちは、給与だけでなく、「どんな働き方ができるか」も見ています。無駄な会議が多い、紙と手作業が多い、情報共有が遅い、毎回同じ作業を人力でやっている。こうした環境は、特に若い世代から見ると魅力的に映りにくいです。

「うちは昔ながらで温かい職場です」という言葉が強みになることもありますが、それと「やり方が古い」は別です。温かさは残して、無駄は減らす。その両立ができる職場のほうが、結果として人は集まりやすいと思います。

身近な具体例

たとえば、ある会社で毎週の営業会議を開いているとします。担当者は会議前日に資料をまとめ、前週の数字を集計し、各自のコメントを整え、当日は会議室に全員集合。1時間話したあと、議事録は別の人が作る。こうした流れは珍しくありません。

5年前なら、それでも普通でした。しかし今なら、数字の集計を定型化し、コメントの整理をAIで補助し、共有事項は事前に配信し、会議では「確認」ではなく「判断」に時間を使うことができます。参加が難しい人はリモートでもよいでしょうし、議事メモも音声やメモから下書きをつくれます。

この違いは、派手ではありません。ですが、毎週続くと大きいです。会議準備に3時間かかっていたものが1時間半になるだけでも、年間ではかなりの差になります。その浮いた時間を顧客対応や改善活動に回せるなら、成果の出方も変わってきます。

まず見直したいポイント

最初にやるべきことは、「毎回同じように発生している作業」を洗い出すことです。文章作成、整理、要約、共有、集計、定例会議、報告書。こうしたものは改善の入り口になりやすいです。

次に、「人がやるべき部分」と「道具に任せられる部分」を分けて考えることです。
人がやるべきなのは、責任を持つ判断、相手への配慮、最終確認です。
道具に任せやすいのは、下書き、分類、要約、比較、たたき台づくりです。

最後に、完璧を目指しすぎないことです。最初から全部を変えようとすると進みません。まずは、ひとつの会議、ひとつの報告書、ひとつの定型業務から変えてみる。その小さな改善の積み重ねが、結果として大きな差になります。

おわりに

生成AIが当たり前になった今、問われているのは「AIを使っているかどうか」だけではありません。もっと大きいのは、「仕事のやり方を見直しているかどうか」です。

パソコンで行う業務の多くは、すでに効率化できる時代です。現場仕事が中心の業種であっても、付随するデータの取得や管理、共有の方法、会議の運営は改善できます。それなのに、5年前と同じやり方を続けているとしたら、それは単なる慎重さではなく、変革できない状態として見られる可能性があります。

そしてその影響は、社内の忙しさだけにとどまりません。価格競争力にも、採用にも、組織の見え方にも響いてきます。

昔のやり方を全部捨てる必要はありません。よいものは残せばよいのです。ただし、「前からこうだったから」という理由だけで続いていることは、一度見直してみる価値があります。今の時代、本当に守るべきものは昔の手順ではなく、成果を出し続ける力そのものではないでしょうか。

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