「マニュアル通りにやったのに、うまくいきませんでした」
この言葉、実はとてもよく聞きます。
一見すると丁寧に仕事をしているようですが、どこか違和感もあります。今日はその違和感の正体と、マニュアルとのちょうどよい付き合い方についてお話しします。
マニュアルは守るもの?
マニュアルというと、「絶対に守るルール」のように扱われがちです。
確かに、最低限そろえておきたい手順や注意点をまとめることは大切です。ただ、それを一字一句守ることが目的になってしまうと、現場は窮屈になります。
状況が違っても「書いてあるから」と同じ対応を続ける姿は、少しロボット的かもしれません。
マニュアルはたたき台
本来、マニュアルは完成品ではなく、たたき台です。
「今のところ、こうやっています」という仮の答えを、紙に置いただけの状態です。
たたき台ですから、叩かれて、直されて、形が変わっていくのが前提です。最初からピカピカの完成形を目指す必要はありません。
具体例:来客対応のマニュアル
例えば、来客対応のマニュアルがあるとします。
「立ち上がって挨拶する」「お茶を出す」と書いてあったとしても、すべての来客に同じ対応が正解とは限りません。
急いでいる方にゆっくりお茶を入れていたら、かえって気を遣わせてしまうこともあります。
そんなとき、「マニュアルではこうだけど、今回はこうしよう」と考えられるかどうかが重要です。マニュアルに縛られず、判断の材料として使えている状態です。
「マニュアル違反」が生む気づき
現場でよくあるのが、「マニュアルと違うやり方」が自然に生まれることです。
これは悪いことではありません。むしろ改善の芽です。
「なぜ違うやり方になったのか」「その方が楽なのか、早いのか」。これを話し合わずに放置すると、マニュアルと現場が乖離します。
逆に、理由を拾い上げてマニュアルに反映すれば、内容はどんどん現実的になります。
マニュアルに従うより、考える
マニュアルがあることで安心してほしいのは、「考えなくていい」ではなく、「考える土台がある」という点です。
ゼロから判断するのは大変ですが、たたき台があれば修正できます。
「ここは変えた方がいい」「これは今のやり方に合っていない」
そんな意見が出る職場は、マニュアルがちゃんと使われています。
更新されないマニュアルの末路
改善されないマニュアルは、やがて見られなくなります。
そして「実際はこうやっている」という暗黙のルールだけが残ります。
こうなると、新しく入った人は混乱します。「マニュアルを見ると怒られ、聞くと忙しそう」という、なかなか過酷な状況です。
おわりに
マニュアルは、現場を縛る鎖ではありません。改善を進めるための共通言語です。
まず形にする。そして使いながら直す。この順番が大切です。
マニュアルを守ることより、マニュアルをより良くする姿勢が、結果的に仕事を楽にします。
「このマニュアル、そろそろ叩き直した方がよさそうですね」
そんな一言が出たら、きっとスタートラインは越えています。

ミタスサポート事務所代表。富山県でIT支援を営んでいます。
中小企業診断士/ITストラテジスト/情報処理安全確保支援士。
確かな知識と実務経験を元に、役立つ情報を随時発信中。
小さな事業者向けに小回りの利くITサービスやサイバーセキュリティ対策に力を注いでいます。

